「くっ……!」

 いい加減体力がつきそうな明美が、歯を食いしばる。戦って逃げて、再び戦うというサイクルでかなり体力が消耗されていた。
 相変わらず、切っても切ってもキリがなく、例え和己が来て3人で戦ったとしても、先の見えないこの戦いに勝てるのか不安になってきた。

 そこへ。
 ちょうど、明美と聖の間に、ひとみを抱えた和己が上から降り立った。

「和己遅い‼」

「遅いぞ‼」

 今まで戦いに専念していた二人には、突然現れた和己に驚いている余裕はなかったが、文句だけはしっかりいう。  
 ひとみを地面の上に立たせると、その盾になるようにして植物のゾンビに立ち向かった。息の上がった明美と聖はそれを援護する形になる。
 目の前で3人が自分を守るように戦っている。何度切りかかっても、次々と新しいツルが地面から飛び出してくる光景に焦りを覚えながらも、ひとみは両手を組み、その場で祈るように大地に膝を下ろす。

 焦らないで。

 落ち着いて……。

 自分を落ち着けるために、深呼吸。
 唇に組んだ手を付けるようにして、そっと瞳を閉じると祈り始めた。  

「俺ら、夜になってもこいつと戦ってんのかな」

 ハァハァ、と息を乱した聖が額に滲む汗を腕で拭い、ぼやく。

「それまでうちらの体力が持てばいいけどね」

 明美が返し、目の前に飛んできた2本のツルを同時に切り離す。 

「………」

 沈黙のまま、和己は槍を操りいっぺんに何本ものツルを薙ぐ。
 地表に出ているツルを一掃しても、静寂はほんのつかの間。再び地面が蠢くと何本ものツルが飛び出してくる。

「も、もういやだ。これ以上っ………?」

 さすがの明美が気力も尽き果てて、根を上げそうになった時、驚いた顔で自分の体を見渡した。手に持った細剣がより軽く、体の疲労感が抜けていく感じがする。自分の体に起こった不思議な出来事に、後方のひとみを振り返った。
 大地に膝を付けたひとみが、その身を捧ぐように祈っていた。その姿にはいつものぽけっとしたひとみらしさはなく、まるで別人のようで、その周りを包む空気でさえ光り輝いているように見え、祈る姿は清らかで、美しいと思うほど。

 ――守らなければ。
 そんな使命感が自分の中に湧き上がってくるのが分かった。

「聖! 和己!」

 明美が声をかけると、聖たちのほうも同じ感覚を味わったのか、力強く頷いた。

 行くよ‼

 勢いの衰えない、植物のゾンビに心をひとつにした戦士たちがそろって切りかかる。