ゾンビバスター~4人の戦士たち~

 午後、食事の買出し。

「和己と行く」

 自ら進んでいったのに、何故か一緒についてきたのは聖だった。
 ひとみは『マリアさま』だからあまり外に出る必要もないが、聖は『戦士』だし、戦いの経験をつむ必要がある。もしも皆が動けない場合、店の場所も把握していたほうがいい。と最もな理由を和己が(メールで)押し付けて、聖と買い物に来た帰りだった。
 二人で歩くのがよほど嬉しいのか、スキップするかのようにリズミカルに歩いている。
 それが視界に入らないのか、いつものなら目障りだとパンチの一つもくれてやるはずの明美は、今朝からずっと和己のことを考えていた。
 『母さん』そういった後も、別段変わったところもなく、いつもどおりのあいつだったが、明美はずっと目で追っていた。

「なんで和己は話さないんだろう」

 何気なく口にした言葉に、聖が足を止めた。

「和己の声、聞いたのか?」

 そういった時のその表情は少し意外そうで。
 明美の中でなにか引っかかった。

「聖? あんたひょっとしてあいつと話したこと――」

「メールで話してるだろ?」

 ニカッと笑う聖はいつもの聖。

「そうだけど、あいつなんで話さないんだろう?」

「よくわかんねぇけど、あいつにも話が出来ない事情みないなもんがあるんじゃないのか?」

「事情ってなんだよ?」

「そんなん俺が知るかよ。でもよ、あいつが話したいって時には、ちゃんと聞いてやろうぜ!」

 『俺は春日部和己だ。それじゃだめなのか?』

 そういったとき、あいつはポーカーフェイスを決め込んでいたが、その表情に陰りが見えたのは間違いじゃないはずだ。聖はそのことを、そっと心にしまいこんだ。
 和己と話したことは誰にも話さないと約束した。男同士の約束。だから明美にも話すことはできないんだ。