知らない土地柄、あちこち歩き回ってスーパーとコンビニを発見。さすがに、食べないと生きていくことはできないためお店は営業していたが、客足は少ないようだった。

 夕飯と明日の分の朝食などを買い込み、店を出て帰路を歩いていると。
 どこからともなく鼻を突く腐敗臭。緊迫した空気が二人を包む中で、突然、3体のゾンビが現われた。
 ゾンビとの初対決。さすがに想像よりグロい彼らに、お腹一杯のときとか気持ち悪い時は会いたくないな、と意外と余裕なことを考えながら、ひとみの祝福が込められた細剣を握り締め、学園で身につけた自信を胸に敵に向かう。
 剣を一振り。切り込んだ先から土のように崩れていくゾンビの半身に、もう一度剣を振り下ろすと、全てが土となってやがて消えた。

「和己!」

 2体のゾンビを相手にしているであろう和己を振り返る。

「あ、れ……?」

 そこにはゾンビの姿などなく、屈みながら皆の食料の入ったコンビニの袋を拾う和己の姿。

「ゾンビは?」

「………」

「倒したの?」

「………」

 僅かに頷く。

「くっ口があるんだからしゃべれってば!」

 和己の態度に切れる。
 和己と話していると、真っ直ぐ歩けば近いものを、わざわざ遠回りして歩いているような、そんな気分になる。
 一人でしゃべって一人で怒っているのがばかばかしくなって再び歩き出すと、目の前の地面が並のように蠢いた。

「!?」

 何事かと驚いて足を止める。その土の波の中から指のようなものが出てきて、やがて髪の毛の半分が抜け落ちた頭が出てきた。

「か、かっ和己……!」

 あまりの気持ち悪さに、それから目を離せずに、今唯一の相棒の名を呼ぶ。
 その間にもゾンビの両腕が伸び、やがてズルリと這い上がり体全体を土の中から現わした。その周りの土も盛り上がり、次々と姿を見せるゾンビだち。

「き、気持ちわるっ」

 身震いして、 後ろを振り向き、

「ぎゃ~‼」

 さすがの明美も叫んだ。和己の手前で同じような光景が広がっていたからだ。
 左右は自分の身の丈よりも高い壁に覆われていて、前と後ろしか道がないというのに、塞がれ退路を断たれた。
 何体ものゾンビたちは明美たちを目指して、ジワジワと近づいてくる。
 自然、挟まれるような格好の二人は背中合わせになる。

 絶体絶命―――!?