今世界のあちらこちらでゾンビたちが次々と現れている。
 甦ったゾンビたち。
 それらは人を襲い、自分らの仲間にして、数を増やしていた。
 無抵抗な人間は逃げ惑い、死に追いやられ、ゾンビの糧となっていく。

 なすすべがない―。
 誰もがあきらめていた。

 その中で、人知れず山奥に建っている全寮制の学校。
 そこには、ゾンビと戦うために訓練された学生たちが暮らしていた……。

 これはそこに住む、4人の救世主たちの物語……。

 ストレートの長い髪を揺らし、息を切らせて廊下を走る一人の娘。その表情は喜びに溢れている。
 彼女は新井明美。16歳。少し言葉遣いが悪いのが玉にキズだが、皆に慕われる明るい性格の持ち主。
 教室の前で、止まると勢いよくドアを開け放つ。

「皆ー聞いて! ひとみが『マリアさま』の称号を得たよ‼」

 その瞬間、静まり返った皆の視線が明美に集まり、次の瞬間には歓声が上がる。

「やったな!」

「さすが1年、期待の新星!!」

「おめでとう!!」

 嬉しい言葉が飛びかう中、一際目立つ派手な格好をした男子が嬉しそうに笑いながら明美に歩み寄ってきた。

「マジで!?」

 今一度確認を取る彼の名は石神聖。お調子者で、いたずら好きだがムードメーカーの彼は皆の人気者だ。
 明美は彼に向けて真っ直ぐ手を伸ばすと、笑顔でピースサインを送る。 

「じゃあ俺たち『救世主』に選ばれるかもしれないな‼」

 いよっしゃぁ! と聖はその場で弾けるようにジャンプをして喜びを表す。