「ありえない!」

 行儀悪くも教壇の机に座って、足を組んだ明美が肩を怒らせて叫ぶ。
 新しい学校。
 転校初日の朝。
 教室の中に、明美を始め、ひとみ、聖、和己も集まっていた。
 いつもの学校の風景ならば、飛び交う生徒たちの元気な声で賑やかなはずだった。

 なのに。
 教室の中はガランとしている。

 4人が揃う教室だけではなく、他の教室も、職員室にも人の気配はない。
 静寂―――。

「まさか転校初日から休校になるとはね、さすがの俺もビックリだ!」

 明美の側に椅子を持ってきて背もたれのほうを前にして座る聖が、バリバリと大げさに頭をかく。

「でも逆に行動しやすくなっていいんじゃないかなぁ~?」

 聖の隣に椅子を持ってきて、ちょこんと座るひとみが首を傾げる。

「………」

 ただ一人、離れた場所で和己は、学園を出る前に各自渡された携帯をいじっていた。
 
 日の明るいうちは目撃情報のなかったゾンビもここ最近は白昼堂々現われるようになったらしい。
 そのため、今まで通常通り授業を行っていた学校も、休校になるところがいくつか出てきてた。
 今日から4人が転向するはずだったこの学校も例に漏れず、今日から休校―――。
 どうにもならない状況に、とりあえず中へ入って教室で休んでいるところだった。

 そして問題はもう一つ。
 学園を出てから……というか、校長に彼を紹介された時から一度も口を利いていない仲間が一人。

「聖、とりあえず、あいつを何とかしてよ」

 明美が聖に頼む。
 仲間意識があるのかないのか分からない奴だけど、このまま放っておくこともできない。
 カッコいい男だけに、無口でいられるとそれだけで近付き難くどこか話しかけにくいものだ。
 和己は携帯の画面をじっと見つめながら、なにやらやっている。

「お~し、まかせとけっ!」

 聖がにかっと笑顔を浮かべ立ち上がったとき、ピロリピロリロ♪ 突然3人の携帯メロディが鳴る。