「何度もいってるけど、いつでも自分の力が思うままに操れるようになんとかしてよ!」

 明美は寝ているひとみを挟んで、向かい側に座る斎神父に文句をたれていた。
 この緊迫した状況下、聖や斎などの明るい人間が側にいてくれるおかげで、重くなる気持ちが救われているのは確かだった。それにしても、力をあてに出来ないのは痛い。

「はぁーそんなこといわれてましてもですねぇ、なんせ、きまぐれな力でして。私が気まぐれな性格だから特殊な力までも、気まぐれになっちゃったんでしょうかねぇ? 不思議ですね~はっはっは」

 なぜか照れたように笑い頭をかいてる神父に、ほめてるわけじゃないから。と突っ込みを入れる明美は、ひとみに視線を戻しながら再び口を開く。 

「だから! その力を何とかして鍛えるとか……ね、いま、ひとみ、動かなかった?」

 うんざりした口調が、後半の言葉を吐く頃には真剣なものになっていた。斎も明美と視線を交わす頃にはまじめな表情に戻っている。

「ひとみさん?」

 斎がそっと声をかける。

「………!」

 カッと目を見開いたひとみは何かを探すように左右を見渡し、その目に明美を捉えた。明美と斎の間に緊張が流れる。

「明美ちゃん……私、勝ったわ」 

 ひとみはゆっくり起き上がり、微笑んだ。

「ひとみ!」

 ほっとして声をかけたその時、手が伸びてきて、気付いたらひとみの両手が首にかかっていた。なんという速さ! 手をかけた本人は、いまだ天使のような微笑を浮かべている。

「明美さん!」

「……く……っ!」

 明美の首に絡みついた手を引き離そうと、斎がひとみの体を引き離しにかかる。
 苦しい。けれど、なぜ? どうして? そんな疑問ばかりが頭に浮かんだ。
 ひとみが私を殺そうとしている……?
 容赦なく締め付けてくる手に、視界が霞む。気道が押さえられて呼吸が出来ない。
 震える手で、ひとみに触れた。
 ―冷たい。

 意識が遠のいていく……。