「ひとみ……こうしている間も戦ってるんだよね」

 体の中に入り込んだ邪悪な者と。なにもしてあげられないもどかしさに胸が押し潰されそうだ。明美が苛立ちから大きく息を吐く。

「いつでも帰ってこれるように俺らは待ってようぜ」

 こうして元に戻れたのはひとみのおかげだ。彼女が目を覚ましたらまず感謝の気持ちを伝えよう。聖は心に決めた。
 皆の心を一つにして、祈ろう。

「四人で一つ」

 和己の言葉に明美も聖も力強く頷いたその時、どこからともなく呻き声が聞こえ、それぞれが身を硬くした。

「不純異性交遊ですーーーーーーっ‼」

 震える叫び声に振り向くと、斎神父が大慌てで胸の上に十字を切っているところだった。
 ふじゅんいせいこうゆう?
 聞き慣れないその言葉に首を傾げながら間近にある聖をまじまじと見た。それから自分に触れたままの聖の手を。

「ちょっと」

「なんだい明美ちゃん」

 満面スマイルの他意のない笑顔。

「いい加減、離してくれる?」

「えぇ~もう少しいいじゃんっ復活祝いにサービスサービス♪」

 体をクネクネさせて、甘えるような仕草に明美がキレた。

「調子に乗るな!」

 聖の顎に綺麗なアッパーが決まる。

「ふごおっ……!」

 再びのけ反る聖は、離すつもりのなかった両手を離して布団の上にひっくり返った。
 顎に命中させた痛む利き手を振りながら明美はフン! 鼻を鳴らして立ち上がる。

「おや? 間違ってましたか」

 見誤っていたことにようやく気付いたらしく、のほほんと首を傾げる斎神父は、どこからどう見てもいままでと同じでかわりがなかった。
 それでもまだ油断はできない。

「斎神父、だよね……?」