意識を失ったままの斎神父。
 それからゾンビになる寸前だった聖。聖水を飲ませたものの、意識が戻る様子がない。
 そして、ひとみ。
 ひとみも体の中に悪魔を抱いたまま意識を失ってからというもの、目を開けることがなかった。
 三人とも未だ目を覚まさないのだ。
 その三人を布団の上に並べるようにして寝かせる終えるころには、和己も明美も口を開く余裕もないほど、疲れがピークに達していた。二人は横たわる三人の様子がいつでも見れるよう、壁に背をもたせかけながら並ぶようにして身を寄せあっていた。
 晴れた夜空には風もなく、冷たい空気が星々をより鮮明に輝かせている。シンと静まり返った家庭科室は、いつもならふざける聖に明美の怒声が鳴り響き、それを楽しそうに見守るひとみや斎神父がいて、冷静な眼差しの和己かやれやれといったようにため息をつく。そんな時間なのに。
 当たり前の、毎日。
 けれど、そんな穏やかな時間はもう戻ってこないような気がした。

 もう、後戻りはできない――。

 和己は肩に寄り掛かるようにして、どこを見ているとも知れない明美にゆっくり視線を移した。

「少し眠った方がいい」

 声をかける和己にも、疲れが滲み出ている。
 しばらくの間が合った後、その肩に顔を預けた状態のままの明美が、ゆっくりとした動作で見上げる。

「……和己は?」

「起きてるから大丈夫だ」

「でも。心配で眠れない。体はだるいのに、眠くない」

「そうだな……っ」

 僅かに体をずらして和己は顔をしかめた。明美を庇い、壁に背を打ち付けた時から熱い痛みは消えていなかった。しかし、これを明美に悟られてはならない。これ以上、心配させるわけにはいかないからだ。