朝の賑わいは、授業が終わるたびに起こっていた。
そしてもちろん、お昼休みになった今でも。

私はいつも通り、ユキちゃんと食べるため、ユキちゃんの机へと向かった。

「あれ、ほんとにすごいわね」

ユキちゃんは人だかりの中心を指さして言った。
もちろん、そこにいるのは芹澤 伊月である。

てか、あれ扱いしてるユキちゃんこそすごいよね!
尊敬しちゃうよ!

「そんなことで尊敬されたくないわ」
「あれ?声に出てた?」

どうやら、私の言葉は心のうちにとどまっていなかったようだ。

そして、私も芹澤 伊月の方を伺ってみた。

たしかに、すごい。
何がすごいのかというと、大勢の女子に囲まれハーレム状態であるにも関わらず、当の本人は全くのガン無視であるということである。

あー、モテる人っていうのはやっぱり違いますな!
私も1回でいいから、男子に囲まれてみたいもんですわ!

「ふーん。ののにはそんな願望があったんだ」
「へ!?」

私また声に出してた!?
っていうか、なんで!?

そう。私の目の前にはさっきまで女子に囲まれ、ハーレム状態にあった芹澤 伊月がいた。

「一緒にお昼食べようと思って」

そう言うと、芹澤 伊月は勝手に私の横に座ってきた。

ちょっと待ってよ。
なんでそんなしれっとしてるわけ?
あまりにも自然すぎて、つっこめなかったじゃん!

結局そのまま、私とユキちゃんと芹澤 伊月の3人でお昼を食べることになってしまった。
ユキちゃんは一瞬目を見開いたが、何も言わずにお弁当を広げた。

そして数分後…。
なぜか、無言で3人一緒にお昼を食べるという謎の構図が出来上がってしまった。
そんな中、先ほどから気になっていることをおずおずと発言する。

「あのー、すごい女子に睨まれてるんだけど…」
「気のせいじゃない?」

芹澤 伊月が弁当箱をつつきながら答えた。

いや、気のせいじゃないって!
多分、ていうか絶対あなたのせいなんですけど!

というのは、口が裂けても言えない。
なんでこんな肩身狭い思いしなきゃいけないわけ?
私何かした?
昨日からほんとについてなさすぎる…。

そして、ついてないときはとことんついていない、というのが大抵の決まりである。