「ただいま〜」

私は、もやもやとしながら家に帰ってきた。

ほんとに誰?どっかで会ったことあったっけ?

このことが学校からの帰り道中ずっと頭の中をぐるぐるとしていた。
だから、私は玄関に見慣れぬ靴があることに気がつかなかった。

「お母さん、今日の夜ごはんなーにー」

リビングのドアを開く。

「今日はオムライスだって」

と、お母さんの声じゃない声が聞こえた。

あれ?また明日ね的な雰囲気で別れましたよね?
ついさっき。

「よかったじゃん。オムライス、昔からののの好物でしょ?あ、もしかして今は違った?」

そう。そこには、私を悩ませている張本人、芹澤 伊月がいた。

「な、なんでいるわけ!?」

私は当然の疑問をぶつける。

すると、お母さんがキッチンからオムライスを持って出てきた。

「あら、いっくんまたお隣に引っ越してきたのよ?だから、夜ごはんよかったら一緒にどうかって誘ったのよ」

いっくん!?
いっくんって、芹澤 伊月のことでいいんだよね!?
ってか、なんでお母さんそんなに親しげなわけ!?
やっぱり、私が忘れてるだけなの!?
というか、お隣に引っ越してきたんですか!?
全くもって知りませんでしたが!?
ちょっと待って、頭が追いつかない…。

「ま、そういうことだから」

そう言うと、芹澤 伊月はいただきますと運ばれてきたオムライスを食べ始めた。

そういうことってどういうことなんですか。

しかし私は、ここで考えることを放棄して、オムライスを食べることにした。

頭を使うのは苦手なのだ。



食べている間お互いは無言で、テレビとお母さんの話す声だけが部屋を賑わせていた。
そして、芹澤 伊月はオムライスを食べ終わるとお母さんにお礼を言って自分の家へと帰っていった。
最後に私のことを見てにやりと笑ったのは、気づかなかったことにしたい。

…なんなんだ、ほんとに。