フェアリーガーデン

 話はまだ、ここが終着点ではないらしい。蒼馬は本来の目的を忘れてしまっているのか、ヒートアップする一方だ。

 自分の妖精のたしなめる声すら届いていない。
 
「みんなが騒いでたぞ、代表がいないって。まさか、この期に及んで出ないとか言うんじゃないだろうな旭。深紅ももう少し妖精としての自覚を持つべきだ――」

『……申し訳ありません。こうなったら、主は無理です。……旭さん。学園長も怒り心頭ですよ、新入生を迎える大事な式を潰す気かと』


 一応、無駄だと思いつつも蒼馬の妖精は責務を果たそうとしてくれたらしい。結果は……無論言うまでもないが。少年の傍らにはやはり、淡い光の蝶が浮遊している。

 淡い金髪の少年は爽やかに笑い飛ばす。自分がこの話題の張本人なのだが、そんなものは微塵の欠片も感じさせられない。

「それは面白いね。傑作だ」

「何が傑作だ! 幼馴染みと言うだけで、なぜ俺が毎回文句を言われなきゃならないんだ!?」

「ハイハイ。まったくお父さんはうるさいんだから」

「その名で呼ぶなっ」



 騒がしく庭園から出ていく少年らの後を、淡いふたつの光の蝶がついてゆく。