フェアリーガーデン

 秘密の場所。今はそこへ、旭を先頭に向かっている。それ以上の事は答えてはくれなかったのは、やはり秘密だから公では公言できないのだろう。


 しかし。会話がないのは気まずい。蒼馬はともかく、自分はまだ出会って、日数も経っていない。


 ひとつ深呼吸して、話しかける。


 「授業受けなくても、本当に大丈夫なんでしょうか……?」

「大丈夫大丈夫。この学園、結構自由きくから。心配いらないよ」


 一体何が大丈夫なのか。透羽は首をかしげるばかりだ。そんな様子を見ていた蒼馬が、助け舟を出してくれる。



「優秀な詩徒に関しては例外が認められる。だから、気にしなくていい」


「でもそれって、旭さんと蒼馬さんだけじゃ……」



 旭と蒼馬が互いに顔を見合わせる。――そうか、なるほど、と。何か言いかけた時、聞き覚えのある声がそれを掻き消した。



『おーい! あっさひー! 頼まれてた、用事すませてきてやったぜ』


『旭さん、蒼馬さん。遅れてすみません』


「あー。深紅は相変わらず空気読めないなあ、ははバカなのかな」


 さらっと言う旭の顔は……笑っているのに、なぜか圧がある。深紅は『なんだよ』と睨み、今にでも口論が始まりそうな空気だ。カグラは落ち着いた雰囲気で、もうこのやり取りには慣れてしまっているのか、蒼馬と同じく静観している。


 透羽にはなんだか、それが可笑しかった。


 小さく笑い、この心地よさが好きだと思った。この学園で馴染めるか心配だったが――旭と蒼馬を見ていると、そんな心配は杞憂だったかもしれない。


 あちらこちらから妖精の視線を感じる――のは、気のせいではないだろうが。



 ……やっぱり特別なふたりなのかな?



「どうしたの?」



 旭の気遣いを察して、「なんでもない」と答える。蒼馬と絡みさえしなければ本当に、気品のある王子様みたいだ。


 学園全体が森の海に沈んでいるかのようで、方向感覚が曖昧になる。迷いの森のようだと透羽は思った。校舎からどんどん離れていくが、一体どこへ向かうのか。


 蒼馬がそれを察してか、申し訳なさそうに言った。


「別に隠すべき秘密ってわけじゃないんだがな。簡単に言うなら、旭の趣味だ」

『そうそう! 旭はヘンタイだからな〜』

「はあ」


 ここぞとばかりに、深紅が嬉々として乗っかってくる。よほどさっきの旭の一言が気に入らなかったらしい。


 結局秘密は、秘密のまま。