『旭、蒼馬、とわきてるよ』
いきなり現れた魚の妖精から放たれた言葉に、その場の空気が凍る。甘い言葉は一瞬にして散ってしまった。
「旭先輩!! とわってどこの誰ですか!?」
「旭先輩はみんなの王子様ですよね……?」
「ひどいです〜〜そんな話聞いてません! 蒼馬先輩と旭先輩が最愛の推しなのに……ファンクラブにも入ったんですよ〜〜」
少女は青ざめる。
今にも戦争が始まりそうな勢いに。こんなのは、日常の風景かもしれない。旭はどこまでも落ち着いていて、蒼馬に関しては無表情。
「クッキーありがとう。そろそろ授業始まるんじゃない? 次の紡ぎ師は特に、遅刻に厳しいから気をつけてね」
――王子様スマイル。落ちない人はいない、まさに無敵のスマイル。
荒波は嘘のように静まり返り穏やかになった。「クッキーまた作ってきます♡」と言い残して。
「これで、いいかな。ごめんね透羽。せっかく声かけようとしてくれてたのに」
「ああ、本当に。彼女たちの行動には、ある意味感心せざるおえないな」
蒼馬に至っては“理解できない”ともう顔に書いてある。ある意味薄明のお手柄なのかもしれない、それもあってかフルーツキャンディをもらっている。
「すすす、すみません! 薄明ってば〜」
『蒼馬、やさしい♪』
ご機嫌な魚とさらに青ざめ、何度も頭を下げる少女。
「いいのいいの。蒼馬は面倒見いいからさ、もっとこき使えばいいんだよ」
「お前が言うと冗談に聞こえない」
ふたりのいつものやり取りに救われる思いだ。やっとの思いで少女――透羽は、安心したように笑う。
「お二人の妖精は?」
「深紅とカグラなら、お使いを頼んであるんだ。まあ真っ直ぐには帰ってこないだろうけど」
旭は肩をすくめる。いつも通りだから、心配ないということだろうか。それを言えば……薄明も似たようなものだと苦笑いする。――今も蒼馬さんのキャンディに無我夢中だもんね……。
しかもおねだりしている。蒼馬はポケットからまた、キャンディを取り出し薄明にあげている。いつも持ち歩いているのか気になるが、さすがに聞けない。
「今から俺たち、お茶にしようと思っているんだ。透羽も来るでしょ? もう買ってあるんだ」
「おおお、お金払います……!」
カフェの前で繰り広げられる物語を店主は楽しんでいるようだが、正直そちらを気にする余裕はない。
慌てふためく透羽に旭はやわらかい口調で諭す。
「落ち着いて、ね? 俺のおごりだから気にしないで」
「――支払ったのは俺だがな」
「それはそれ。今から案内するよ、秘密の場所へ」
「秘密の、場所、ですか?」
悪戯っ子のように微笑む旭の横で、荷物持ち担当なのか蒼馬がテイクアウトしたものを受け取っている。そわそわした魚が、その周りを泳いでいる。
……これが“友達”なんだ。
透羽は心の中でそっとつぶやく。
やわらかな春の陽が差し込むような、子供の頃に読んだ絵本のようなあたたかさが、そこにはあった。
いきなり現れた魚の妖精から放たれた言葉に、その場の空気が凍る。甘い言葉は一瞬にして散ってしまった。
「旭先輩!! とわってどこの誰ですか!?」
「旭先輩はみんなの王子様ですよね……?」
「ひどいです〜〜そんな話聞いてません! 蒼馬先輩と旭先輩が最愛の推しなのに……ファンクラブにも入ったんですよ〜〜」
少女は青ざめる。
今にも戦争が始まりそうな勢いに。こんなのは、日常の風景かもしれない。旭はどこまでも落ち着いていて、蒼馬に関しては無表情。
「クッキーありがとう。そろそろ授業始まるんじゃない? 次の紡ぎ師は特に、遅刻に厳しいから気をつけてね」
――王子様スマイル。落ちない人はいない、まさに無敵のスマイル。
荒波は嘘のように静まり返り穏やかになった。「クッキーまた作ってきます♡」と言い残して。
「これで、いいかな。ごめんね透羽。せっかく声かけようとしてくれてたのに」
「ああ、本当に。彼女たちの行動には、ある意味感心せざるおえないな」
蒼馬に至っては“理解できない”ともう顔に書いてある。ある意味薄明のお手柄なのかもしれない、それもあってかフルーツキャンディをもらっている。
「すすす、すみません! 薄明ってば〜」
『蒼馬、やさしい♪』
ご機嫌な魚とさらに青ざめ、何度も頭を下げる少女。
「いいのいいの。蒼馬は面倒見いいからさ、もっとこき使えばいいんだよ」
「お前が言うと冗談に聞こえない」
ふたりのいつものやり取りに救われる思いだ。やっとの思いで少女――透羽は、安心したように笑う。
「お二人の妖精は?」
「深紅とカグラなら、お使いを頼んであるんだ。まあ真っ直ぐには帰ってこないだろうけど」
旭は肩をすくめる。いつも通りだから、心配ないということだろうか。それを言えば……薄明も似たようなものだと苦笑いする。――今も蒼馬さんのキャンディに無我夢中だもんね……。
しかもおねだりしている。蒼馬はポケットからまた、キャンディを取り出し薄明にあげている。いつも持ち歩いているのか気になるが、さすがに聞けない。
「今から俺たち、お茶にしようと思っているんだ。透羽も来るでしょ? もう買ってあるんだ」
「おおお、お金払います……!」
カフェの前で繰り広げられる物語を店主は楽しんでいるようだが、正直そちらを気にする余裕はない。
慌てふためく透羽に旭はやわらかい口調で諭す。
「落ち着いて、ね? 俺のおごりだから気にしないで」
「――支払ったのは俺だがな」
「それはそれ。今から案内するよ、秘密の場所へ」
「秘密の、場所、ですか?」
悪戯っ子のように微笑む旭の横で、荷物持ち担当なのか蒼馬がテイクアウトしたものを受け取っている。そわそわした魚が、その周りを泳いでいる。
……これが“友達”なんだ。
透羽は心の中でそっとつぶやく。
やわらかな春の陽が差し込むような、子供の頃に読んだ絵本のようなあたたかさが、そこにはあった。



