宙さんは落ち着いていて、ううんと頭を横に振った。
「そう、私も思ってたけど…だから。そう言われた時は忘れようって決めてた」
「そうじゃないなら…」
「奥さんと、別れたんだって」
あまりにも都合が良すぎる話で、耳を疑った。
別れたならば、数日前のあの幸せそうな顔は?嘘?
「奥さんが、浮気してたんだって。それで、先生が好きな人と幸せになれそうだったら、別れるつもりだったって」
「じゃあ…先生の好きな人は、」
「うん。ずっと前から両想い。政略結婚で、お互いに好きな人がいる状態だったみたい」
頬に手を当てている宙さん。
「良かったですね」
この言葉がやっと言えた。
辿り着き方がどうであれ、私は宙さんを応援すると決めた。
ならいいじゃないか。
結果はハッピーエンドなんだから。
「おめでとうございます」
「うん、ありがと」
ふにゃりと笑った宙さんは幸せそうで、それは今までで一番で。
結局、私がどんなに頑張ったところで、好きな人と結ばれることには勝てない。
対立する方が間違えてるけど、やっぱり一瞬で持ってかれたのは寂しい。


