涙がポロポロと落ちていく。
やっと自分の状況に気付いた宙さんは、必死に止めようとしていた。
そのことに必死で、次の言葉を紡ぐことを忘れていた。
隣に座り、リズムよく背中をさする。
今にも呼吸がおかしくなりそうな彼女に私ができることは、これだけ。
「遊乃、ちゃ、」
「はい」
「…驚かないで、聞いて…?」
「わかりました」
宙さんが決心したように大きく息を吸った。
「いい、って」
「はい…………え?」
「先生が、うん、って」
予想できなかったことが悔しいとかいうよりも、まず予想の片隅にもなかったこと。
いい、ってことは。
付き合うってこと…
「愛人?」
反射的に出た言葉に驚いて口に手を当てる。