『春村は春村だろ』
あの頃の私は単純で、そんな一言が特別に思えた。
周りへの扱いと私への扱いが同じだったとしても関係なかった。
自分の気持ちは自分のもの。
先生が言った言葉を違う方向に捉えていた。
だから、罰が当たった。
『先生って彼女いるの?』
先生にたかる女子生徒の1人が何気なく口にした言葉。
いわば男教師の通過儀礼。
なのにあの時、聞きたくないって思ったのは、その答えがわかっていたから。
薬指に光る指輪。
そんなの勝てるわけない。
『もう結婚してる』
先生からすれば、ただ生徒の疑問に答えてあげただけ。
でも私には、諦めろって言葉にしか聞こえなかった。