「ごめんね、苑」
「ううん。あたしが悪い。ごめんね、無理に聞いちゃって」
首を横に振るお姉ちゃん。
「別に隠すことでもないの。そうね、私は先生が好き…今でも変わってない」
何も言葉をかけられない私に、お姉ちゃんは大丈夫、と言った。
「昔はそれこそアピールしまくって…。妻子持ちなのにね。若いってのを言い訳にしてた」
「………」
「この話はここで終わり!苑、あんた夕食作ってよ。これじゃー無理」
パン!と手を叩いたお姉ちゃんは、あたしの腰を押して立たせた。
これ以上はお姉ちゃんが話さない。
そう思ったあたしは、素直に諦めてキッチンへと向かう。
お姉ちゃんの指は包帯でぐるぐる巻き。
怪我は結構深かったけど、あたしが大袈裟すぎたってのもある。
でもあのぐらいじゃないと無理しそうだったから。
あたしが包丁を握ったのを確かめると、お姉ちゃんは自分の部屋へと歩いていった。