「ごちそうさまでしたー」
馴染めそうな雰囲気の店の店員にペコッと軽く頭を下げる。
店員も下げかえす。
当たり前の行動。
カランカラーン、とドアに付いているベルが鳴ると、穏やかな気持ちになれる。
「遊乃、ごめん」
目の前じゃ口に出せなかった言葉。
こんなにも簡単なことなのに。
「どーして言えないんだろ…」
「あ、苑発見?」
「え?」
独り言が聞こえてたら大恥…そう思いながら振り向けば、特に警戒する人物ではなかった。
「お姉ちゃん」
「よ!買い物行く途中だったんだ、付き合え妹よ」
「…いいけど」
遊乃程じゃないけど美人な姉、宙。
元気がとりえ。
「苑、あんた暗いよ?後ろから見てると今にも自殺しそー」
怖い怖い、と腕をさすりながら、顔をのぞき込んでくる。
お姉ちゃんはこういうことに鋭い。
特に恋愛。


