「え?海?」

夏休みがもうすぐそこに迫ってきている。

みんなのうきうき感が伝わってくる。

今は授業と授業の中休み。次の授業の準備をしているときにその言葉は唐突にやってきた。

「橘ー海いこー」

「え?海?」

「そー」

彼の名は永嶺弘孝(ながみねひろたか)君。私と同じ陸上部。割と身長は高い方で一見クールに見えてすごくフレンドリーな男の子。

「なんのために?」

「えっと…陸上部の親睦を深めるため」

「必要ないじゃん?だってもう引退しちゃったし」

「最後にみんなで楽しむ」

永嶺君を見る。時々目を右上に逸らす。

「橘もこいよ、絶対楽しいk…っ!とりあえず考えとけ」

授業開始のチャイムと同時に先生が入ってきた。永嶺君が足早に自分の席に戻る。

(考えるもなにも…行くわけないでしょ。私には誠がいるんだし)

私の名前は橘まひろ。

どこにでもいる普通の中学生。

そんな私には彼氏がいる。

名前は谷口誠(たにぐちまこと)。

中2の冬に告白されて付き合った。正直言うと私は最初は彼が好きではなかった。

でも徐々に彼に惹かれていって今では誠が1番大好きなんだ。

付き合って初めての夏は誠と過ごしたい!

そう考えているんだ。

窓の外を見る。

夏の太陽はさんさんと輝いている。

「あついなぁ……」

「宗太郎、早くしないと授業始まっちゃうよ」

「んー」