「藤咲さんってさー、中二のときに子供おろしたんだってねー。慣れてるはずだよ」
なに……言ってんの?
いくらネコに男子取られたからって、そういう嘘はよくないと思う。
「山根さん最低だよ?」
「だって本当のことじゃない。藤咲さんって、平和中に行ってたんでしょ?平和中の吉岡さんって知ってるよね?」
山根の言葉にネコは答える。
「……知ってるよ」
「吉岡さん、私の従姉妹なんだよねー。平和中出身って藤咲さんだけだし、なんかおかしいと思ったんだー」
「それがどうしたの?」
そう言ったネコはいつものネコじゃなくて……。
男子がいるときのネコの態度じゃなくて……。
「なに?開き直ってるの?」
「別に。司、帰ろ?」
「うん……」
お店を出てもネコは無口で、私は少し前を歩くネコに思わず聞いた。
「なんであんなこと言うんだろうね。……てか、本当なの……?」
するとネコは立ち止まり、背中を向けたまま私に言う。
「司が……本当だと思うなら本当でいいんじゃない?」
そのあと、いつもよりネコは無口で、
本当無口で、
私の頭の中はこのことでいっぱいになった。
本当なの……?



