目が覚めると、ソファーに順がいた。
あのまま眠ってしまったのかな?
信司は起きてるかな?
部屋をノックする。
「はい」
「起きてた?」
「ああ、中に入って」
ソファーに座るとコーヒーを出してくれた。
「ありがとう」
「ハッピーバースディ」
白い箱を私の膝に置く。
「なんだろ?」
箱を開けると、ハートの指輪が入っていた。
「可愛い」
「薬指にはまると思うよ」
右の薬指にはめる。
ピッタリだ。
「ありがと〜う」
チュッ
「んっ〜ふぅー」
「今ここで抱きたい…」
「ダメよ、順がいつ起きてくるかわからないんだから」
「順か…」

キッチンで朝食の準備をする。
今度は信司が手伝ってくれた。
順が起きてきた、目を擦っている。
「おはよ、ご飯出来てるよ」
テーブルに並べ、三人で食べる。
なんか不思議な感じ。
私は自室に戻り、指輪を眺める。
「うまくいってたのに…」
今さら後悔しても仕方がない、自分で決めたことだし…。

その頃、信司と順は…

「俺、今度こそ、円を射止めるから」
「俺だって負けるわけにはいかない」
二人の間に火花が散る。

ふと、目が覚めた。
「あれっ、寝てた」
ベットから起き上がり、あくびをする。
二人の間に挟まれ、どっちつかずになってる私。
信司を愛していたはずなのに、順に惹かれ始めている。
やな女。
自分が嫌になる。
「帰ろうかな…」
これじゃ、東京にいるのと一緒。
コンコン
「はい」
「円」
「信司、私東京に戻ろうと思うんだけど」
「俺も考えてた。帰るか」

東京…
マンションに着く頃には夕日がさしていた。
ソファーに深く座り、何もしたくない気持ちで一杯。
「円ちゃん、いる?」
タケの声だ。
ドアを開けると司も一緒だ。
「入って」
急にホッとして、緊張が緩む。
「何飲む?」
「用意してきたから座って」
ソファーをポンポンと叩く司。
「ジャーン、シャンパンを用意しました!」
「あと、ケーキもね」
「うわぁー、ありがと、嬉しい」
ケーキを広げ、シャンパングラスを持ってくる。
「「円ちゃん、ハッピーバースディ」」
ロウソクの火を消す。
「さあ、食べよ」
私はケーキを4等分に分け、皿に移す。
パクリと一口。
「おいしい」
「よかった、円ちゃんが元気になって」
「どうしてそれを?」
「信司から話聞いた。大変だったね」
司が頭を撫でてくれる。
「うん…」
涙がこぼれそう。
「俺らがいるから大丈夫。安心して」
「ありがと…」
涙がポロポロと流れる。
「いっぱい泣いていいんだよ」
タケが私を抱き締めてくれた。
「タケっ」
わーんと押し殺していた涙が溢れた。
ひとしきり泣いた後、二人にありがとうと言う。
「あの二人の前では泣いたことないんでしょ?」
「うん…」
「俺たちって存在もいるから、甘えていいんだよ」
また涙が出そうになる。
「二人に救われたわ」
微笑んでみる。うまく笑えたかな?
「さあ、飲み直そう、居酒屋でも行く?」
「うん!」

近くの赤だまと言う居酒屋ののれんをくぐる。
「いらっしゃいませ〜」
座敷に通され、飲み物とつまみを頼む。
「これ、頼みすぎじゃない?」
「いいの、俺たち腹減ってるから」
ドリンクが来た。
「とりあえず、カンパイ!」
「「カンパイ!」」
私もお腹が減っていたのか、料理に手を出す。
ほどほどに酔いが回り、いい気分になってきた。
それから二時間、マンションに着く頃には私は超ハイテンション。
「円ちゃん、ご機嫌だね」
「うん!二人のおかげ」
「円、どうした?」
順が部屋から出てきた。
「順〜!二人と飲んできたの!」
「ご機嫌だね。あとは俺がみるから」
「順、任せた!」
「バイバイ、タケ、司」
「「バイバイ!」」
順の部屋に入り、ソファーに座る。
「はい、水」
「ありがとう、順!」
「楽しかった?」
「うん!」
水をごくごく飲む。
「円がご機嫌だど俺も嬉しいな」
「ん?そうなの?」
「うん、円が嬉しいと俺も嬉しい、悲しい時は俺も悲しい」
順がそんな風に思っててくれてたなんて…
「順、ありがと〜」
「いえいえ、どういたしまして」
笑みがこぼれる。
順の良さが、わかるようになってきた。
こんなに思ってくれてたなんて…
信司とは違う魅力がある。
心が揺れた。
なんでもっと早くに気づかなかったんだろう。
信司を悲しませる予感がした。