初めは何が起きたのか解らなかった。気づくと私は自分の体を見下ろしていた。
何故、私はここにいるのに、目の前に自分が倒れてるの?
「う〜ん」
私が目を覚ました。
「大丈夫?」
「あ〜、俺は大丈夫。何で俺が居るんだ?」
やっぱりそうなんだ、体が入れ替わってる。
「私とあなたの体が入れ替わったみたい…」
「え〜と、君に声かけようと思ったら、車が出てきて。それを助けようとしたらこうなったのかな?」
「はい…こんな事になって…」
「とりあえず場所変えよう」
街のショーウィンドウに姿が写る。
そこには私と津田順一郎が写っていた。
津田とは、アイドルグループNOTKの1人、彼を知らない人はいない。
「ここ入って」
静かな喫茶店に入る。
「順、遅いぞ。彼女は誰だ?」
年配の男性…マネージャーかな?
「俺だよ」
経緯を話、順一郎はマネージャー石塚のプライベートの話をした。
「順の中に彼女…名前は?」
「橋爪円といいます」
「橋爪さんの中に順が居るんだな」
「「はい」」
信じがたいが、それが真実だ。
「これからどうするかだ…」
「私、順一郎さんのように振る舞えないと思います」
「俺も」
「だが…そうだ!順には円さんのマネージャーをすると言うのはどうだ?」
「マネージャー?」
「常に一緒に居ればフォローしやすいし」
「それもそうだな〜」
「メンバーにも話さないとな」
どんどん私の知らない所で話が進んでいく。
「とりあえず移動するか」
石塚さんは腰を上げる。

着いた先はテレビ局。
楽屋に入る。
「順!遅いぞ」
木下信司が手を上げる。
「…」
「何黙ってるの?隣の子は誰?」
浮田健が首を傾げる。
「俺から説明する」
石塚さんは私達に座るよう目で合図した。

今までの事を詳しくメンバーに伝えると…
「そんなことってあるの?」
野木司が目をぱちくりさせる。
「俺らを担ごうとしてない?」
信司は疑いの目で見る。
「残念ながら本当の話だ」
順一郎が私の顔で答えた。
「じゃあ、これからどうするの?」
健は椅子にクルクル回りながら私達を見る。
「順には、円さんのマネージャーになってもらう」
「ライブは?」
半信半疑な司。
「円さんに覚えて貰うから、みんなサポートしてくれ」
「「「はーい」」」
「円さん、よろしくね」
真っ先に信司が寄ってきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「俺も居るから…」
順一郎は熱いまなざしで私を見る。
「うん…」
「何々、いい雰囲気出してんの〜?」
椅子から立ち上がった健が野次を飛ばす。
「健、うるさい」
「とりあえず、振り付け覚えてもらおうか」
司がスタジオに連れて行く。
「試しに踊るから、見てて」
司が踊り出すと、私は自然と体を動かし、前から知ってるかの様に踊った。
「どういう事?」
渡しは疑問を投げ掛ける。
「順の体が覚えてるって事かな」
健は私の問いに答えてくれた。
「そうみたいだ、円さんの体では踊れない」
「試してみたのか?」
「あぁ」
ホッと胸を撫で下ろす。
「じゃあ、ライブは大丈夫だな」
みんなホッとしたようだ。
「今日はもう仕事ないから、解散するか?」
「そうだな、円さん行こうか」
順一郎が私を見る。
「はい」
二人で出ようとしたら、信司がついてきた。
「俺も行く」
「信司が?」
「円さんの家に行くんだろ?」
「はい」
荷物をとりに行く。
「俺の車で行こう」