「到着いたしましたよ千夏様。」
そう言って車のドアを開ける花崎。
返事をして鞄を持ち車を降りようとした千夏に
「千夏。」
「はい?」
名前を呼んで止める。
千夏は返事をして振り返り俺を見た。
(あの小僧が変に接触して来たら面倒だな…。)
「もしあの男がお前に近づいてきても全力で逃げろよ。
今はそんなに2人でいるところを見られるな。いいな。」
と俺は用心深く千夏に注意を払う。
千夏は俺の言葉に
分かりました気をつけます!
と敬礼して気合いを入れ返事をした。
(…まぁ心配だがこの様子なら大丈夫だろ…。)
そう思い千夏を見送って
俺も車で職場まで向かう。
「花崎、祭りっていつだったか覚えてるか。」
「今週の土曜日と日曜日です。」
「記憶力いいな。」
土曜か…。
俺は休みは取れるとして
あいつ学校ないよな?
あれ、最近の高校ってどこも土曜授業あるんだっけか?
え、あったらどうする。
休ませるのも酷だし
帰り待つか?
疲れてるところに祭り連れて行くのもなぁ…
あんまり気が進まねぇし。
「そしたら日曜のが良いのか…?
でも学校が無ければ土曜でもいいか…。」
「千夏様とお祭りの約束でもなさっているんですか?」
「あ?あぁ…まぁな。
多分今日のうちに予約を任せると思うがよろしく頼む。」
「…かしこまりました。」
バックミラー越しに見える花崎の顔が
何と無く微笑んでいるように見えたが
気のせいか?
いや、花崎は四六時中微笑んでるか。
(…祭りの日、あいつどんな顔するかな…。)
と考えている俺の顔も
知らないうちに緩んでいた。

