車まで連れてきて
扉を開けて千夏を乗せる。
そしてすぐに車を走らせて
家に向かった。
「…あ、の…仁美さん…。」
「………。」
千夏が口を開くも
俺は返事をしなかった。
…怒っている?
あぁ、怒ってる。
何でか自分でもわからないが
苛立って仕方が無い。
(………。)
助手席に座った千夏。
俺の横で黙って気まずそうに下を向いていた。
嫌なことでもあったのか
浮かない顔をして膝の上でギュッと手を握っていた。
「…降りろ。」
家に着いて車を停め
そう一言だけ告げて俺も車を降りた。
花崎がすぐにこちらに歩んでくるも
俺はあいつに着ていたスーツのジャケットだけ乱暴に渡して
そのまま家の中へ入った。
そしてそのまま1階にある大きなソファに座った。
すぐに煙草を取り出して吸う。
(……嫌な予感がしたのはこれか。)
スーッと白い煙を吐きながら
一旦心を落ち着かせる。
冷静に
頭を整理しろ。
感情任せになるな。
冷静に、冷静になれ…。
そう1人で心の中で言い聞かせ
感情を抑えていると
千夏も花崎と一緒に家に入ってくる。
そして玄関を過ぎると
そのまま俺の前までやってきた。
「……今日はどうしたんだ。」
千夏が口を開く前に尋ねる。
状況をイマイチ把握できていないまま連れ去ったからな。
聞いておく必要がある。
…どうしてあぁなったのか。
「…あの子はこの前話した凛太朗くんという子で…。」
友達が私と凛太朗くんの仲直りのきっかけを作ろうと秘密で計画したみたいで…
と静かに訳を話す千夏。
黙って俺は話を聞いていた。
「…変なところを見せてごめんなさい。」
千夏が申し訳なさそうに下を向いて謝る。
俺はもういい、と言って千夏に顔を上げさせる。
「…少しの間部屋に戻る。
夕飯は好きにするといい。」
それだけ言い残して
俺はソファから立ち上がり
席を立つ。
そして階段を上って
2階にある自室に入った。
千夏だけが1人
1階に取り残された。

