ネックレスをしたまま
私服に着替えて部屋を出ると
仁美さんと食事ルームへ向かう。
部屋に入れば
いつもと同じように向かい合って座る。
もう承諾したのか
仁美さんは席に関して何も言わなくなった。
そしてそのまま食事が運ばれてきて
いただきますの合図で食べ始めた。
(…あ、そうだ。)
「仁美さん。」
私は雛のことを思い出し
食べるてを止めて仁美さんに話しかける。
仁美さんは視線をこちらに向けて
何だ?と目で訴えかけてくる。
「明日は帰りが遅くなります。」
「…どこか行くのか?」
「はい。友達と遊んできます。」
「そうか。
…じゃあ帰る時に連絡しろ。迎えに行く。」
そう言って仁美さんは食事を再開する。
案外あっさり許してくれたなぁ。
なんて思いながら私も食べ進める。
"出かける時は必ず知らせること"
それが仁美さんとの約束。
(なんか本当に保護者みたい…。)
なんて思いながら仁美さんを見る。
「…んだよ。」
パチっと目があって
仁美さんが眉を寄せながら尋ねてくる。
「そういえば仁美さんて…いくつなんですか?」
「…いくつに見える?」
「うーんと…にじゅう…に?」
「あぁ?」
仁美さんが眉間にさらにシワを寄せる。
え…これでもかなり若めの年齢だと思うんだけど…。
ってことは…もしかしてもっと若いのかな?
「え、いくつなんですか…?」
「…20。」
「へ?!」
20?!
今年成人したばかり?!
(ひ、仁美さんてそんな若かったの…?!)
たった20歳で車運転して煙草吸って副社長してるって…
この人本当にただ者じゃないなぁ…。
「私と少ししか違わないんですね…。」
「まぁな。」
そう言って仁美さんは食事を終わらせて
席を立つ。
私の横を通る時に
頭にポンっと手をおいて
「まぁ、俺の方が全然大人だけどな。」
と薄く笑って
そのまま部屋を出て行った。
(………。)
私は仁美さんが出て行った方を見ながら
ふと気持ちが沈む。
…確かに仁美さんは大人だなぁ、と思う。
仕草とか、行動とか
言うことは時々わけわかんないけど…
(…私と仁美さんの壁、高いなぁ…。)
と何だが少し悲しくなった。

