「…仁美さん。」
「何だ。」
信号待ちの間
俺はそばに置いておいたコーヒーを口にしながら千夏に問う。
「仁美さんって好きな人います?」
「ブッ-----?!」
(っ…はぁ?!)
唐突すぎるその質問に
俺は思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しかけた。
喉に詰まってゲホゲホと咳込み
ようやく落ち着いた頃に千夏を見た。
「お前っ…いきなり何て質問してくんだよ!!」
「別に普通に聞いただけじゃないですか。」
「内容が内容だろうが!!」
今まで(と言ってもまだ数日)そんな話に
なったこともないってのに
いきなり何聞いてきてんだこいつは。
さっきまでベンツの話をしてた流れで何故だ!!
「それで、どうなんですか?」
「…いねぇよ。」
「そっか〜…仁美さんもいないんだぁ〜。」
とつまらなさそうに眉を下げる千夏。
ったく…今時の女子高生っていうのは
人の恋愛に興味持ちすぎなんだよ。
「…もし私が凛太朗くんと付き合うって言ったら、仁美さんどう思います?」
「……それは実に不愉快だな。」
「不愉快…ですか?」
「あぁ。大事なペットがあんな変態に取られるなんて…かなり不愉快だな。」
なんて答えると
千夏は目をパチパチさせながら俺を見る。
そしてハハッ!と笑いながら
俺に言う。
「絶対付き合ったりしませんから、大丈夫ですよ。」
「フンッ…正しい判断だな。」
と言うと千夏は満足げに笑いながら
外の景色を見る。
(もし千夏とアイツが付き合う、だ…?)
もし
万が一そうなった場合は
俺が全力でお前を奪い去るだけだ。

