「千夏ってさ、好きな人まだできないの?」
「へ?」
いつも通りのお昼の時間。
今日は男子たちは来ないで
本当にいつも通りのお昼を迎えた。
そんな時雛が突然私にこんな質問をするから
私はキョトンと雛を見る。
「だって、凛太朗くんかっこいいし
彼氏にしたって何も問題ないのに
断るからさ…。好きな人いるのかなぁって。」
「あ、あぁそういうことね…。」
凛太朗くんを断ったのは
別に好きな人がいるからとかではない。
ただ純粋に彼のことを好きではなかったっていうだけで…。
「千夏ってどういう人が好みなの?」
「好み…。」
私、思えば好きな人なんてずっといないからなぁ…。
自分がどういう人が好みなのかイマイチ把握できてないんだよね。
(見た目とかは…。)
うーん…黒髪で大人っぽい人?
あとは何だろう…クールな雰囲気、とか?
でもどうなんだろ。実際にそんな人に恋したってわけじゃないからよくわからないんだけど…。
「この前のお兄さんみたいな人はタイプじゃないの?」
「へっ…?!」
ひ、仁美さん?!
仁美さんは別にそんなんじゃ…!!
「見た目だけ見てもかなりいい男だったじゃん?」
「え…そ、それは…そうだけど…。」
確かに仁美さんはかっこいい…と思う。
イメージに合わず黒髪だし。
会社が厳しそうだから染められないだけなのかもしれないけど…。
顔もシュッとしてて小さいし
目もキリッとしてて鼻筋も通ってるし。
芸能人みたいな人だし
申し分ないけど…。
「中身は?どんな人?」
「え…中身は…。」
-------俺様。
仁美さんには悪いけど…この言葉が1番仁美さんを表していると思う。
坊ちゃん育ちだからなのかな?とは思うけど
花崎さんをいろいろとコキ使っているし
私に対しても自分の言いなりにさせようって感じが結構あるし…。
(……でも…。)
根は…すごい優しいと思う。
私が迷わないようにお風呂の入口の前で
わざわざ夜中に待っててくれたり
いざ迷った時はすぐに探し出してくれたり…
携帯も買ってくれて
凛太朗くんのことも…一応守ってくれるって言ってたし…。
(でも…それは私を引き取ったからで…。)
親代わり…として
妹みたいに可愛がってくれてるだけなのかもしれない…。
「…千夏?」
「え?」
「何か今すごい悲しそうな顔してたよ?」
大丈夫?と雛に聞かれて
私は何でだろう、と自分で疑問に思った。
悲しそうな顔…?
どうしてなのか考えてもわからず
雛に大丈夫と言って
自分で少し混乱した。
(……気のせいだと思うけど…。)
結局よくわからず
気のせいだということにして
私はお昼ご飯をまた食べ始めた。

