無駄にこの屋敷が広いおかげで方向感覚まで狂いそうなんですが。
1度もとの部屋の前に戻って、再度違う方向へと向かう。
…あれ、こっちも違う。
ってことはこっちか…
…え、ここも通った記憶が無いんですが…。
(………。)
さすがに全選択肢を封じられ焦る。
このまま誰とも会えずに一夜を過ごすのでは…何て予感がして冷や汗をかいた。
何でこういう時に限って仁美さんいないのよ…!!
もうヤダ今日本当についてないこと多すぎる…。
「……何でこんなことに…。」
自分でそう言って、泣きそうになる。
口に出してしまうと弱いもので
本当に心が折れそうになる。
それを分かっているけど、もう溜まってしまって仕方なかった。
(……"あの人"さえ、あそこに来なければ…。)
私は今頃こんなところに居ずに
いつも通りの生活を送って
平和を手にしていたのに…。
「っ……もうやだぁ…。」
ついに我慢していた涙がぽろぽろと出てきて
屈んでいたため、足に涙が落ちて流れる。
前がボヤけて
息がしづらくて
苦しくて
寂しくて辛かった。
もう、疲れたよ…
「…っ、千夏!!」
「………!」
顔を上げて前を見れば
ゆがんだ視界の中に
仁美さんの焦ったような顔。
「っ…仁、美さん…。」
…あぁほらやっぱり
迎えに来てくれた。

