「突然で驚かれて
冷静にお話は難しそうですね。
今日はもう帰ります。」

「っ、あの…!」

「……大宮さん。」







静かに立ち上がって
俺を見た若木は

先ほどの狂気は見当たらず
普通に冷たい視線で俺を横目で見ていた。


そして俺の名前を呼んで





「…後日千夏を迎えに行きます。」

「-----!!」







そう一言残して

俺が後から呼び止めた声を無視し
そのまま部屋を出て行った。





(………これは…。)






ヤバイ気がする。




千夏を迎えに行く…って どういう意味だ。

俺の家まで押しかけるということか
もしくは
千夏の学校まで出向くということか


…どちらにしても






「………っ!」







-----千夏が危ない。






俺はすぐに家へ電話をかけて
花崎に連絡を取った。





『もしもし、仁美様いかがなさいましたか。』

「花崎、緊急事態だ。
若木辰臣と言う男が会社に来た。」

『若木辰臣…?
その方がどうされましたか。』

「そいつは千夏を元々引き取ることになっていた男だ。
千夏を返すよう直々に俺に言いにきたんだ。

…迎えに行くと言っていた。
千夏が危ない。」

『-----!!』







言葉の意味を察したらしく

花崎は分かりました、と返事をして


送迎の時間を早めて
校門で怪しい人物がいないか監視をするということと

家の警備の強化を連絡しておくと
俺に告げて、電話を切った。







(……嫌な予感が止まらない。)








何もなくいてくれよ…千夏…。