「あ!ありましたよ仁美さん!」





千夏がそう言って指差す方向に
ベビーカステラ屋さんが確かにあった。





「ん、じゃあ買うか。」





そう言って
手を繋いだまま、列に並ぶ。


慣れたようで気にしていないのか
千夏は特にこれについて反応はない。


いいことなのか悪いことなのか…






「20個入り。」






俺は屋台のおじさんにそう言って
代金を払う。

千夏は俺に
「すいません、ありがとうございます」
とお礼を言った。



俺たちはカステラをもらうと
そのまま歩き進んで行って
また道の外れに出る。

食べる時はこういうところの方がいいだろう。





「ふふ、いただきます。」





千夏が嬉しそうに袋を開けて
中から1つずつ口に含む。

俺がその様子を横で眺めていると





「仁美さんも食べません?」






と笑顔で差し出され

俺は少し悩んだあと
ん、と言って口を開ける。

食べさせろ の意味。




すると先ほどと同じように
うっ…と顔を赤くしながらも

えいっ、と口の中にカステラを放り込む千夏。



…うん、美味い。






「美味いな。」

「ふふ、さっき幼いとか言ってたのに。」





とニヤニヤしながら言ってくる千夏に
俺はだから…と繋げる。






「それは褒め言葉だって言ってんだろ。」






可愛いって言ってんの、と
少し照れながらも言えば

千夏はそこまで言われると思っていなかったのか

また顔を赤くして、食べる手を止める。






(っ……だからその顔やめろっての…。)






顔を赤くしながら
困ったように眉を下げて
視線を彷徨わせる千夏に

俺はそんなことを思う。






「そ、そこにトイレありますね!!
私ちょっと行ってきます!!」






と急に立ち上がったかと思えば
俺にカステラを預けて
小走りで向かってしまった。


そんな照れられると俺も照れんだけど…
と頭をかきながら
とりあえず千夏が来るのを待つ。




すると…