君色の夏




「千夏さ、そんなに昼飯少なくて足りるの?」



おにぎりふたつをもぐもぐと食べている私を見ながら、涼平が首をかしげてそう聞いてきた。



「え? 全然足りるよ」



「俺だったら、絶対足りないな。おにぎりふたつなんて」



まあ、高校生にもなれば男の子だったら、昼ご飯におにぎりふたつじゃ足りないか。



「千夏ー。早く食べて遊ぼうよー」



涼平は、私の食べるスピードの遅さに呆れてため息をついた。



しょうがないじゃん。



これでも、頑張って早く食べてるんだからね。



「ごちそうさまでし……」



「よーし、千夏! 泳ぎに行こう!」



……私に『ごちそうさまでした』と言う隙も与えてくれず、涼平は私の手を引っ張った。



「ちょっ……涼平! 食べてすぐ後に水の中入ったら気持ち悪くなるって……!」



そう言っても涼平は手を離してくれず、そのまま走り続けている。



涼平と手を繋いでいる、そう理解した瞬間、涼平に繋がれた私の右手が一気に熱を帯びていくのを感じた。



波打ち際までやってくると、涼平は波の動きを見計らうことなくザブン、と海の中に入っていく。



涼平ってば、タイミング悪いって。



案の定涼平は波に巻き込まれている。



まったく……何してんだか。