「どうしても! どうしても、お願いします!」
昼下がり。
私は涼平の主治医であるお医者さんに向かって頭を下げていた。
「でもねぇ、千夏ちゃん。涼平くんの容体を考えると、簡単には許可できないんだ」
「それは分かってます! でも、そこをなんとか……お願いできませんか」
『この命が消えるまで、生きることを諦めない』
そう言った涼平に、小さくてもいいから“素敵な思い出”をプレゼントしたい。
そう考えた私は、一日だけ涼平に外出許可をもらおうと、こうしてお医者さんに頭を下げているのだ。
「涼平に、最高の思い出をプレゼントしてあげたいんです!」
お医者さんはしばらく考えていたけれど、急に顔を上げた。
「千夏ちゃんの思いは分かった。それなら……来週の日曜日、3時間だけ許可する」
「えっ! 本当ですか!?」