私は溢れそうになる涙をグッとこらえ、伊織の手を取る。ゆっくりとしゃがみこんで、顔を覗きこんだ。
今にも泣きそうな、迷子の子どものような表情をした伊織に、穏やかに微笑んだ。


「私も、伊織を愛している。伊織を失うのが恐いよ」


そう伝えながら大きな手を強く握る。


「恐いって……それはみんな同じなんじゃないかな」
「え?」
「誰だって愛する人を失うのは恐いよ。愛しているからこそ、居なくなったらと思うと恐いし不安になるのは当たり前だよ」


それはみんな、誰もが抱える想いではないだろうか。


「伊織が私を信じきれないなら、それでいい」
「真琴……?」
「私は、伊織の側から居なくなることは絶対にないけれど、伊織がそれでも私を信じきれないならそれでいいと思うの」
「でもそれじゃぁ……」
「その都度、伊織が確かめてくれたらいい」


そう言って、ニッコリと笑う。