とった伊織の手のなかに、ホテルのキーらしきものを落としてそっと握らせる。


「僕は、君と同じだった。そして、僕はやっとできた愛する人を信じきれなくて壊してしまったんだ。お互いが不安になり、失うことを恐れて疑い、いつしか歯車が合わなくなって、疲れてしまった。どうすべきだったかに気がついたときにはもう手遅れだったんだ。だこら、僕は君たちには僕と同じようになっては欲しくない」


カインの声が微かに震えていた。


「心で愛を伝え会うだけでは駄目だ。夫婦なんだからきちんと、二人で話をして心から信じ会えるようにならないとね」


カインはニッコリと笑うと、俯く伊織と私のの背を押してパーティー会場の外へと追い出した。


「その部屋は僕からのプレゼント。もう少しで留学も終わるし、お礼ってとこかな。良い夜を。goodnight」


そう告げられて扉は閉まったのだった。