それから、私は伊織に対して露骨に愛情を示すようになった。


「伊織ー」


大学の学食で伊織の姿をいち早く見つけた私は大きく手を振った。
入り口にいた伊織は驚いた顔の後に、私だとわかると笑顔をみせる。


「ここ空いてるよ」
「珍しいな、真琴から俺を見つけるなんて」
「まぁね」


隣に座る伊織に笑顔を返す。
すると「俺もいるんだよ、真琴ちゃん」と肇が苦笑しながら薫のとなりに当たり前のように座る。


「ごめんなさい。伊織しか見えてなかった」
「これだから新婚はっ」


肇は悔しそうにするが、そんなの無視だ。

学部が違うと学校でもなかなか会えない。今は少しでも愛情をアピールする大切な時間なのだ。