私は立ちすくんでその背中を見送る。
追いかけようと思ったが、その背中が全てを拒んでいた。

「困ったものだねぇ、我が息子は」

声の方を振り替えると、お義父さんが苦笑しながら立っていた。ずっと見ていたようだ。

「あなたが原因では?」

カインは穏やかに問いかけるが、目は笑っていない。

「伊織は大切な存在を奪われてきた。それがトラウマになっている。幼い頃の実母の死と初恋の人を父親に奪われたことと」

カインが話したことに目を丸くする。
トラウマ?
母親の死と初恋の人である春佳が父親と結婚したことが?

「調べたのか」
「調べさせました」
「君をホームステイさせて正解だったよ」

お義父さんにカインはため息をつく。

「人を息子のカウンセラーにしないでよ」
「王子に対してそんなつもりはなかったが、得てしてそえなったな」
「全く」

カインは苦笑して、私を振り返った。

「僕はキッカケをつくっただけ。後は妻の真琴の仕事だ」


そう微笑まれ、大きく頷いた。