振り替えると伊織が厳しい顔でカインを睨んでいる。
これはまずいかも。

「伊織、あのね」
「真琴に触るな」
「触ってないよー」


カインは穏やかに頬笑む。

「心配しなくても、僕は真琴をとったりしないよ。なにも怖がることじゃない」

そう言うと伊織は私から離れ、カインの胸ぐらを掴んだ。

「伊織!」
「お前に何がわかる」

伊織は低い声でカインに言った。
その怒ったような、しかし怒りを抑えるような声にハッとした。こんな伊織は初めてだ。


「お前に何が」


吐き捨てるように呟いた後、伊織は部屋を出ていった。