カインの言ったことがわからない。
私にはわからないと言ったが、それは決してバカにしたようなものではなく、どこか切なげで悲しげだ。
ただ、カインが伊織と仲良くなりたいと思ってくれていることは凄く嬉しい。
伊織はあまりそう思って無さそうだけど。
「ねえ」
講義が終わり、いつものテラスで薫と会っていると、薫が突然声を潜めた。
「あの彼は何者?」
薫の視線を辿ると、そこには黄色い声援と何人もの女の子に囲まれたカインがいた。
ニコニコと愛想を振り撒いている。
それを横目にしれっと答える。
「何者って、留学生だよ」
「そんなのわかってる。でもただの留学生じゃないよね?」
鋭いな。さすが。
心のなかで薫のことを褒める。
もちろん、表情でバレないように紅茶を口に運ぶ。
カインが留学生としてこの大学へ来てから3日。その甘いルックスからあっという間に人気者になった。
巷では、既婚者の伊織が駄目ならカインと国際結婚を目論む者もいるとかいないとか。
そして、カインの素性は極一部しか知られておらず、一般的にはただの留学生。
まぁ、雨宮家にホームスティするくらいなので、良いとこのお坊ちゃんくらいに思われている。



