「ところで空先輩、」






「何?」






「私の名前知らないですよね」






「…ごめん」






「いいんですよ。今から覚えてくれたら」







「…ぁあ」






「佐倉、梓紗っていいます」






「そか」






「佐倉って、呼んでください」







「…分かった」






「空って、いい名前ですね」






「そうかな」






言われたのは初めてだった。






「はい!私、自然の名前が大好きなんです!海とか花とか」






「佐倉だって桜じゃん」






「そうですね!」






すると佐倉は続ける。






「空先輩はいい人です」







「は?」






突然予想もつかなかったことを言われた。






「言ってる言葉はめちゃくちゃな人なのに本心はちゃんと考えてるんですもん」






「そんなことないよ」






「いえ。私はそう思います。掃除だって手伝ってくれたし、皆が思ってる以上に空先輩はいい人です!」







「…でも、それを言葉には出来ない」






「そんなの空先輩だけじゃないですよ。私だってきっと同じですから」







「…そっか」







「はいっ!じゃあ私はここなんで」






「またな」






「はいっ!」






なんだか不思議な気持ちになった。






こんな俺を認めてくれる人がいるなんて。