空が、私のペースに合わせて歩いてくれる。






「…あのさ」







「うん?」







空は前を向いたまま私にこう言った。







「去年の花火大会、言えなかったんだけどその、」






「ん?」







告白かな?







「…似合ってるな。浴衣…」







「え…」







「…なんだよ」







空はやっと私の顔を見る。







「ううん、空からそんな言葉聞けるとはなって」







「あっそ。去年だって思ってたんだけどな」







「そう、なんだ…」







去年の花火大会はあまり見れなかったもんね。






しかもここからかなり離れたとこだったし。







私達が小さい頃によく行ってた公園だったもんね。







「なんやかんや言って、恋人として行くの初めてだもんね!」







「まあな」







「うちのお母さんうるさいんだよ?出かけるたびに今日は空君とお出かけ?今日は空君とお出かけって」







「それならこっちも似てるよ」







「へー、そうなんだ」







人が増えてきたな。







「あ、空!ちょっと待ってて!」






「ちょっ、おい!どこ行くんだよ!」







空の手を話そうとしたのに






「頼むから俺の傍から離れんな」







って、ぎゅっと握りかえしてくれた。







「あ、ごめん」







「どこ行きたいんだよ」







「りんご飴あったから、そこ行きたいなと」






「あー、行こうぜ」







「うんっ!!」






それから私達は花火が上がる時間までお店を回った。






りんご飴に綿菓子に、金魚すくいをした。





「あ、果歩!」






「…緑っ!?」







緑は卒業したばかりの先輩といた。






やっぱ緑の浴衣姿は可愛いね。






「ふたりも来てたんだね」






と、緑は私達に言った。






「当たり前だろ」






と、空が答える。






「卒業式以来だね」






青先輩。






「久しぶりです。青先輩帰ってきてたんすね」






「うん、昨日からね。また明日には帰るよ」






そっか、先輩は大学県外だって言ってたもんね。






「ふたりも元気そうで良かったよ」






「まあ。コイツは元気過ぎてうるさいくらいだよ」







「ははっ、そうなんだ」






「果歩浴衣似合ってるね!」







「そんなことないよ。髪短くて苦労するよ」






「いいじゃん短くて。私はそっちの果歩の方が好きだよ!」






そんな会話をして二人と別れた。






「もうすぐ始まるな」






「もうそんな時間?」






「あぁ。見えるとこ行こうぜ」






空が私を引っ張る。






なんかこの感じ、いいな。






どきどきする。






「ねぇ空」






「ん?」






すると花火が上がった。







「もう…好きすぎるよ」







「あ?なんて?」






「…大好き!空が好きなのー!」






ずっとそばにいたいと思う人。






気持ちを分かち合いたいと思う人。







どんな困難にも一緒に乗り越えていきたいと思う人。







それが私の大好きな空。







空は突然止まる。







そして私の顔を見てこう言ったんだ。






「俺も好き」






って。






それが空から聞いた、付き合って初めての好きだった。







その声ははっきりと私の耳に聞こえました。





END