向かい合う空と私。
今までこんな真剣な空、あったかな?
「まず…黙っててごめん」
「え?」
「俺ずっと…」
「…空?」
「やべ…無理かも…」
え?なにが?
「何言ってんのよ、ここまで来て!」
緑?
「緑ちゃんの言う通り。空、ここで言わなかったらもう、部活辞めろー」
先輩?
「マジか。…だよな」
「あの…話の意味が全く…」
ついていけません。
「…俺」
再び口を開けた空。
「??」
「果歩が好き…なんだけど…」
「…え…?」
好き?
って、どういう…。
「小さい頃から好きだった。俺と付き合って…」
う、嘘…。
小さい頃から?
「で、でも空には梓紗ちゃんがいるじゃん…」
「は?誰だそれ」
「えっ!?サッカー部のマネージャー…」
「あ、アイツ?なんでアイツが出てくるの」
「え?だって梓紗ちゃん言ってたよ?空と付き合ったって」
そう聞いたもん。
「はぁ?俺があんな女と付き合うわけねーだろ。俺にはずっと好きな人がいたんだよ」
「果歩は知らねーだろうけどな、俺ずっと断ってきたんだけど」
「え…」
「だからその女とも付き合ってねーよ」
「え…じゃあ…」
すると先輩が
「恐らくそれは嘘だね」
と、言った。
「な、なんでですか?」
「なんでって、俺が付き合ってないって言ってんだろ」
空が答える。
「そうだね。佐倉さん、空を狙ってたみたいだよ?だから果歩ちゃんが邪魔だったんじゃないかな?」
と、先輩は言う。
すると
「連れてきたよ」
さっきまでそこにいたはずの緑はなぜか梓紗ちゃんの後ろにいた。
「梓紗ちゃん…」
「…」
梓紗ちゃんは私を見てこう言った。
「…ごめんなさい!」
っと。
「え、え?」
「空先輩と付き合ったっていうのは嘘なんです。私は中学の頃から空先輩を知っていました。それで、同じ高校を受験してもしも受かったら、告白しようと考えてて…」
「…」
「でも、空先輩からはかなりの前にあっさりと振られました」
「え…」
「俺には好きな人がいるから、その人じゃないと無理だって、言われました。だから私、悔しくて…空先輩の好きな人を頑張って見つけました。それが…果歩先輩でした」
「…」
「私はどうしても空先輩がよかった。だからあなたに嘘をついて、あなたの気持ちを空先輩から引かせようって思ったんです。だけど空先輩は、ずっとあなたを想ってるんだと分かりました」
「…」
「あなた達を見ていたら、なんだか適わなそうで…無理だと思いました。…嘘ついたことと、あなたに変な事を言ってしまった…本当にごめんなさい」
梓紗ちゃんは私に頭を下げる。
「梓紗ちゃん…」
「そんなずるいことしても無駄だって、あなた達を見て思い知らされました。…あの…」
「…」
「これからも、空先輩の隣にいてあげてください」
梓紗ちゃんはそう私に言った。
「空先輩は、果歩先輩がいないとだめみたいで…シュートは外すし、練習中はぼさっとしてるし、すぐに行動に出るんです」
「そうなんだ…」
「うるせーな、それ以上言うな」
「あんたは黙ってて」
緑は空に言う。
「サッカー部のマネージャーとして言わせてもらいます。空先輩にはあなたが必要です。だからこれからも、そばにいてやってください」
「…ありがとう、梓紗ちゃん」
「え?」
「本当のこと、言ってくれて」
「…」
「私も…空が必要だから…」
私は笑顔で言った。

