はっとして顔を上げると





そこには悲しそうに笑ってる

田﨑くんがいた。




「た、田﨑くん…?」



田﨑くんの名前を初めて声に出すと

自分で言ったのにも関わらず



胸が高鳴る。



田﨑くんは私に答えず

しゃがんで私と目線を合わせた。




「葵ちゃん、俺の事嫌い?」








嫌い…?

そんな事ない。




「嫌いじゃ…ないよ。」


「じゃ、なんで逃げるの?」


「みんなが怖いから。
田﨑くんが私の事、好きなんて
嘘ついたから。」



私がそう言うと


田﨑くんは、しゃがんだまま

壁に片手をついた。



「嘘なんかつくと思う??
俺は葵ちゃんが好きだよ。」



「信じられないもん!!
私みたいな地味でキモい子を
田﨑くんが好きになるわけない!」



自分で言って悲しくなってきた。



ほら、涙が溢れてきたし…





「俺にはそう見えないけど?
本当は凄く可愛いのに。
ね、こっち向いて」



田﨑くんに言われた言葉が
胸に溶けていくのを感じながら



私は田﨑くんと視線を交わすために
上を向くと


涙が頬を伝った。



「泣かないでよ。」



それを田﨑くんが指先でぬぐってくれる




嘘みたい、今、だって


田﨑くんが目の前にいるんだよ??




あんなに遠い人だと思ってた人が

私の事を好きだと言ってくれてる。





「葵ちゃんの事が好きだよ。
早く俺の事好きになって?」



もういっその事、



嘘でもいいや。





なんて、思いながら私は




「か、考えときます。」



なんて意地張っちゃった。