海賊たちが持つたいまつの炎が、島のあちこちに散っていきます。
 彼らは悪い海賊です。人の者を盗んだり、人をこわがらせることを平気でします。
 ――優しい人たちをこわがらせる海賊は許さないぞ。
 クウは網を破ろうと必死になって暴れました。けれど、網は破れそうにありません。
 そんな暴れるクウを見て、海賊たちが笑います。

「優竜を捕まえる専用の網だ。何をしたって切れないのさ」
「しかし、優竜とは思わぬ収穫ができたな。売ったら金になるぞ」
 シャロンを助けるためにきたのに海賊につかまってしまったクウは、悔しくて仕方ありません。
 海賊たちが次々と盗んだものを船に載せるのを見ながら、低いうなり声を出すしかありませんでした。

「おお、優竜。優竜の子どもか」
 その時、人間の声が聞こえました。
 クウは声のしたほうを見ます。
 海賊たちの仲間ではないのでしょう。
 声を出した人間は、腕を海賊に捕まれていました。
 金色に輝く奇麗な布を身につけ、頭には金色に輝くかんむりがあります。
 クウは、その人間が今まで会った人間とはすこし違う、えらい人と感じとりました。

 ――この人がシャロンのお父さんなのかな。優竜を助けてくれた王様かもしれない。
 そうクウが思っていると、途端に金色の服を着た人間の目から水がこぼれ落ちました。
「優竜が生きていてくれた。妻が愛していた優しい竜が。人とともに歌を歌う竜が」
 クウはその人間を見て、なぜか悲しくなりました。シャロンの時と同じように首を伸ばして、 その人間の手をなめます。優竜が相手をなめることは「お友だちになろう」という意味だけではなく、「元気を出して」という意味もあるのです。
 そして、励ますようにクウは「クウ、クウ、クウ」と三回なきました。

「その声、私の友だちだったクウの声にそっくりだ。そうか、その子どもが君なのか」
 金色の服を着た人間は、クウの顔を見ながら何かに気づいたような顔をします。
 クウが首を縦に動かすと、その人間は更に大粒の水を目から流していました。