蜂蜜と棘。5


「夏樹!早かったね!」
「ママがね適当に食べるから
はやく行っておいでって」


「夏樹のママは優しいよねー
綺麗だしさー羨ましいよ」

「リカんところもお母さん綺麗でしょ」

「あーん、うちはダメ。
怒ると鬼婆だもん。
さっきも遊びに行ってくるって言うと
血相変えてさ。勉強しろ!ってうっさくて…」

「いい成績とればいいんだって」
「まあそうだけど。
無理なものは無理だ!」

「そーいや、
ここのクラブ初めてじゃない?
入れんの?」

「だいじょーぶ!御心配にはおよびません!ここの店員と知り合いだから!」


「ようこそ、可愛いお嬢さん達」
どこかしらか、背の高い男の人が現れた。


「あっ!ソラさーん!こちら
私の友達の夏樹です!」

「どうも。夏樹です」
「夏樹ちゃんだね!俺はソラ
よろしく!」

笑顔が良く似合う人だった。

軽く会釈だけすると
ソラは店の中へ姿を消した。


いつもの店よりなんだかキラキラしていて
お酒も美味しかった。


「ねえ、ソラって人はリカの彼氏なの?」
「なわけ!彼氏だったら自慢してるわよ!」

「どこで出会ったのよ」
「たまたまね、私のバイト先に来た時
声をかけたの」

「たしかに無駄にイケメンだよねー」

「優しい人だから、オススメするよ」
「馬鹿、いーよ。あたしは。
イケメンすぎてときめかないし」

「あんた、変わってるよ、ほんと」
「それより、踊るのとお酒の方が好きだわー」

「恋しないともったいないって。
あたしら女子高生だよ?」

「はいはい、お花畑はリカの頭の中だけにしてください。じゃ私この駅で降りるから」

「うん、おやすみ。また月曜日ね〜」
「おやすみ」


二人はそれぞれの家路を辿る。

「ママ心配してる…」

ケータイを見ると、ママから
メッセージがたくさん着ていた。


帰らないの?
お酒で寄ってて知らないとこいるの?
ママもう寝ちゃうよ?
おやすみ

「…って、メッセージ
朝方の4時じゃん。ママもデートしてたんだ(笑)」


私は「今から帰るね」と
返信をして、家までの道をゆっくり歩いてた。




(2015/07/13 07:42:52)