蜂蜜と棘。4



久しぶりに貴方と会う。


娘が大きくなってからは
月に2回くらい家に顔を出して
お互いの都合が良い「平日」デートする。



こんな生活がもう10年以上経つ。



すぐにバレると思った。
幸せなんて長くは続かない。




でも既に娘は高校一年生なってしまった。
それでも
私達の生活は変わらなかった。



あの日まではー。



○o。..:*・・*:..。o○



「お待たせ!」
「久しぶり姫菜。
あれ?夏樹はいないの?」



「うん、お友達と約束あるんだって」
「あーそうなんだ」


「寂しいの?(笑)」
「べ、別に。
今日はいないのかって思っただけ」


「今日は私で我慢して」
「何ゆってるん。俺は姫菜と会えたら
十分だし!さ!ご飯いこ!九里虎(グリコ)
でええ?」
「うん!」



九里虎駅。
あたし達は初めてここで一緒に
夜を明かした。


私はあなたに育てられたようなもの。
キツイ訓練の教官が他の誰でもない貴方だった。

凄く怒られて沢山泣いた。
でも訓練を乗り越えて救命士にれたのは
全部貴方のおかげ。


訓練が終わって皆がバラバラになる
その日の夜
貴方は飲みに行かないか?と誘ってくれた。



九里虎駅周辺の居酒屋をハシゴして
飲み明かした。

貴方と一緒にいる時間が凄く楽しかった。



手をつなぎたい。
でも、そんなこと出来ない。
貴方に家庭があることは知ってた。
そもそも貴方は私のこと教え子としか見てないだろうから。


だから、泊まる!?
なんて言われても
特に下心とかないんだろうって。

山に行って救命の訓練なんてすれば
そこらじゅう男女転がって眠っているし別に普通だったから。

もう眠りたいからなんだ。って。

なんの警戒心もなくビジネスホテルに
入った。



「お風呂一緒に入るか?」
そのセリフも冗談みたいに聞こえた。

でも
後ろからギュッってされると
抑えていた感情があらわになる。


「貴方は結婚してる。
いいんですか。本当に…」
「西寺こそ、彼氏いるのに」
「私は…いいの。好きだから。
好きだから…」


唇が重なる。
キスが好きだなんて思ったことは
一度もない。
でも、あなたとのキスは
柔らかくて優しくて甘い。

何度も何度も
攻められても、それに応えてしまう。

「いい?」
「はい」

少しづつ裸になっていく心。
もう全部あなたに捧げてしまっても
いいと思った。


(2015/07/10 10:55:40)