蜂蜜と棘。3


あたしのパパは家にいない。
救命士だからなのか、忙しい。


月に一二度帰ってきては
またすぐにどこかへ行ってしまう。


「夏樹、今日さ夜暇?」
「うーん。まあ暇かな」

「じゃあさ、クラブ行こうよ」
「いーよ。でも晩御飯作ってから
出るからちょっと遅くなるかも」


「晩御飯つくるんだ。偉いなー
夏樹は。今どき珍しい高校生だよね」
「リカもご飯くらいつくってあげなよ」

「私はいいのよ。ママの手料理好きだし」

「さっき弁当に文句つけてたくせに」


帰りのバスは二十分ほど遅れた。



「ただいま〜」
「おかえりー夏樹。
遅いから心配したよ」

「ちょっとバス遅れてね。
あ、ママ今日さ夜でかけるから。
晩御飯作ったら出るね。」

「そーなの?
じゃあ早く行っておいで。
ご飯なんて、ママ適当に食べるから」

「ありがとう。てかママ、
学校帰ってくるの遅い時は心配するのに、夜遊びに出かけるのなんも言わないんだね」


「癖なのかな。夏樹が小学校の時
行方不明なったから」


「あの件はごめん(笑)
蝶々追いかけるの夢中になって、
気づいたら知らないところにいた
んだもん」

あたしは
きっとそーゆー性格をしていたんだろう。


追いかけて追いかけて…
夢中になるとハマりすぎて
周りが見えなくなる。



だから、ママを困らせた。
あんなに好きなママを泣かせてしまったんだ。


(2015/07/10 10:18:23)