あなたとのキョリ


『…何の用?』

「おいおい
仮にも元カレに対してその態度はないだろ
楽しくおしゃべりしようぜ」

なによ…

今さら…
何を話すっていうの?

『…わたしは何も話すことなんてない
じゃあね…』

顔を見ていたくない…
嫌なことを思い出しちゃう

わたしが去ろうとすると、彼はわたしの腕を掴んだ

『いやっ!!』

あの日と同じ…

いやだ…
いやだっ!!

「そんなに嫌がるなよ」

手を振り払おうとするけどふり払えない

彼の腕は中学のときより力が強くなって
わたしの動きを止める

動けないわたしに、彼が距離を詰めてくる

「鈴華
前と変わらず美人じゃねえか」

彼はわたしの耳元で囁く

体にゾッと寒気が走り、震えが止まらなくなる

聞きなれたその声で…

わたしの名前を呼ばないで!!

「俺はまた付き合ってやってもいいぜ」

『っ!!』

わたしの中で…
何かが切れる音がした…

『一体なんなの!?
人にあんなひどいこと言ったくせに今さら!!
あんたを見てると嫌なこと思い出しちゃうからもうどっか行ってよ!!』

長い間溜め込んでいた思いが
せきを切ったかのように溢れ出す

1度溢れたら
もう止まらない

『あんたが何度も想いを伝えてくれて、嬉しかったのに!!
あんたと付き合って、幸せを感じてたのに!!』

涙が出そう
こいつの前だけでは泣きたくない!!

わたしは目にぐっと力を入れて彼を睨んだ

『でも…
あの日で全部壊れた…
わたしの中の優しいあんたを返してよ!!』

なんとか泣かずにすんだ

言いたいことは言った
もうここにいたくない…

『離してよ
もう2度とわたしの前に現れないで』

「ふーん
言うようになったじゃん」

本気になって叫んだわたしを、
彼は珍しいものでも見るように笑っている

なんなのよ…
早く離してよ!!

「優しい俺ってなに?
元から俺はこういうやつだよ
騙されたお前が悪い」

ほんと…
なんでこんなやつ好きになったんだっけ

もうわかんない…

「お前のこと好きになるやつなんて
いねえんだよ」

ああ…
あんたはまたそうやって…


わたしの心を底なし沼に引きずり込んで
2度と上がってこれないようにするんだね…

わたしに限界がきて
涙がこぼれそうになったとき…

「手を離せ」

聞き覚えがある
低い声が響いた