あなたとのキョリ

『ええーーーーーーーーーーーー!?』

「ちょっ!!桃!!声でかい!!」

教室の真ん中で思い切り叫んだわたしの口を、鈴華が慌てて塞ぐ

えっ?待って?
鈴華今…
彼氏が出来たって言った?

ト…トラウマは?
克服出来たの?

誰?
名前は?


『むぐぐ…』

聞きたいことはたくさんあるのに鈴華に口を塞がれているせいで話せない

「あっ、桃!
次の授業始まるよ!
…あっ、ごめん」

『ぷはっ』

鈴華がやっと手を話してくれた

鈴華ひどいよ~

ジト目で鈴華を見ると、鈴華は「ごめんってば」と笑った

笑い事じゃないよー!
窒息するかと思ったよー!

「あとで、ゆっくり話すから」

『ううー…』


気になるよー…

授業中だっていうのにあれこれ考えてみる

鈴華の彼氏だからかっこいいだろうな~とか、
背が高くてモデル体型でーとか、

わたしの中で妄想が膨らんでいく

もう先生の話なんて聞いてないけど

自分の考えた鈴華の彼氏像を想像して、そのお似合いっぷりに少し嬉しくなる

「…くらだ……桜田っ!!」

『へっ!?なに!?』

「お前、ボーッとしてただろ!
俺の授業を聞かないとはいい度胸だ」

え!?そんなにボーッとしてたの!?

あわわわ
しかも今鬼教師の酒井先生の授業だ!

絶対怒られる!

『す、すみません!!』

「いや、謝ることはない
先生は感動したぞ、お前のその度胸に」

『え?
あ、ありがとう…ございます?』

怒られない?
今日機嫌いいのかな?

なぁんだ~
よかっ…

「お前のその勇気をたたえてこの問題を黒板で解く権利をやろう」

問題?
ってこれ?

a、b、c、d、x、y…

なんじゃこりゃ!?
暗号!?古代ローマの暗号でしょ!?

『えええええええ!?
先生!!わたしに古代ローマの暗号の解読は無理です!!』

一瞬クラスがシーンとしたあと一気に笑いが起こる

笑われてる!?
恥ずかしい!

先生は怒りを通り越して呆れてる
眉をピクピクさせながらため息をつく

「お前はまだ寝ぼけてるのか!!
どう見ても数学の問題だろう!!」

『ええええええええええ!?
アルファベットばっかりですけど!』

クラスの笑いは最高潮
先生も噴火しそう
少しでもつんっと触ったらボカーンだな

「いいから前に出て解け!」

『えええええええええ!!』

「えええええじゃない!!」

わたしと先生の訳のわからない会話と、クラスの大爆笑の中、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った