あなたとのキョリ


「落ち着いてきたか?桃」

『うん…』

駿君の家のリビング
ほぼ毎日通っているから、わたしの特等席になったソファ

ぴぴちゃんも、わたしの膝が特等席になっている

「どうしたんだ?
話したくないなら、無理に話さなくてもいいけど、話せるなら、ゆっくりでいいから話してみな」

駿君が優しくわたしに話しかける

でも、ごめんね
駿君には言えないの

だって、成海さんは駿君のことが好きなんだもん


そんなこと
言えないよ…


わたしが黙っていると、駿君がまた優しくわたしに話しかける

「成海のことで
いろいろ不安になってるんだろ?」

『…うん……』

隠してたつもりだったけど、駿君にはわかっちゃうんだね

「桃、我慢する必要なんてない
我慢するなんて、桃らしくない
桃はいつも素直に俺を頼ってくれるだろ?」

『うん…!』

わたしは駿君に抱きついた

駿君もわたしを抱きしめて頭を撫でてくれる

「はーいよしよし
桃ちゃんいい子だねー」

『駿君…
また子どもだってばかにしてるでしょ』

「あ、バレた?」

『もうっ、バレバレだよ』

駿君はわたしの目に残っていたわずかな涙を指で丁寧に拭き取ってくれた

そして…

キスを知らせるあの色っぽい顔をする

唇が重なると、唇から駿君の鼓動が伝わってくる感覚がする


…そっか

成海さんが知ってて、わたしの知らない駿君がいるなら、わたしが知ってて、成海さんの知らない駿君もいるんじゃないかな


駿君がわたしのかわりに家族にしてくれたぴぴちゃんとか、いじわるをするときの、いたずらをする子どもみたいな顔とか、

あとは…


キスする前の

色っぽい顔とか…

他にも、たくさんあるよ


わたしは、今の駿君しか知らないけど、
成海さんの知らない駿君も、たくさん知ってる

『駿君、ありがとう』

急にお礼を言われたのにびっくりしたのか、駿君は一瞬キョトンとしたあと、またいつもの笑顔を見せてくれた


わたしの大好きな駿君の笑顔