あなたとのキョリ



「え?」

『え?』

わたし、何も変なこと言ってないよね?

「あっ、ごめん
俺に言われたみたいに感じて…」

だ、大好きって?

『あっ…』
ボッと効果音がつくくらい顔が赤く染まる

た、確かに…
そう聞こえるかも

『ご、ごめん
紛らわしかったね
ぴぴちゃんのことだから、気にしないで…』
わあああ
これはこれでなんか!
駿君のことは好きじゃないって言ってるみたい

「うん…
そうだよね…」

駿君しょんぼりしてる…
ごめん駿君!
わたしの言い方が悪かったから

「『…』」
な、なんか
変な雰囲気になっちゃった

どうしよう

「返事…」

『え?』

「返事
まだできないかな」

あっ…
そうだ
駿君のこと、ずっと待たせてるんだ

『…まだ、心の整理ができなくて
ごめんね…』

心の整理がつかないよ…
なんでわたしはこんなに恋愛が得意じゃないんだろう…

恋愛が得意になりたいよ…

「俺…」

『え?なに?』
駿君がまた口を開いた

「もう…
限界かも…」

『え…?』
限界?
ってどういうこと?

「桃のことが好きなんだ
もう我慢できない…」

駿君が真剣な顔でわたしを見る

見つめられて、身動きができない

駿君がわたしの頬に手を添え、もう片方の手でわたしの肩を掴んだ

駿君の綺麗な顔がどんどん近づいてくる

『しゅ、駿君!
待っ…』

駿君の吐息がわたしの鼻にかかったとき
わたしの手が反射的に動いた

そして

「パチーンッ!!」

部屋いっぱいに甲高い音が響く

わたしは駿君の顔を叩いてしまった

その音にびっくりしたぴぴちゃんが、わたしの膝から逃げていく

『っ…!』

駿君が叩かれた頬を抑えながら、驚きと悲しみが混ざった顔でわたしを見る

「ごっ、ごめん桃っ…
俺、どうかしてた…
本当にごめん」

駿君がまた私の方に手を伸ばす

わたしはその手を払いのけた

『っ…
帰るっ…』

荷物を取ると、玄関に走って行く
後ろから駿君がわたしを呼ぶ声が聞こえるけど、聞こえないフリをして玄関を飛び出した

家に着くと、ただいまも言わず真っ先に自分の部屋に入った

『はぁっ、はぁっ
うっ、ふぇっ…』
次から次へと涙が出てくる

わかってる
駿君は全然悪くないって


『わたしのっ
バカっ…』

どうすればいいの?
誰かわたしに本当の答えを教えて…